全身麻酔による上室性頻拍に対するカテーテルアブレーション
上室性頻拍に対するカテーテルアブレーションは、局所麻酔で行う病院がほとんどです。術中は、不整脈をあえて誘発するため動悸がしますし、不整脈を起こりやすくする薬も使うため脈がはやくなります。心臓の手術ということで極度に緊張しているところに、カテーテルからの刺激や薬で脈がはやくなったり遅くなったりするため精神的に相当な負担があると思います。私たちは、少しでも楽にカテーテルアブレーションを受けていただくため全身麻酔によるカテーテルアブレーションを行っております。男性にはつらい尿道バルーンもいれずに行います。寝ている間に不整脈が治ったと喜びの声を多くいただいております。
誘発率
多くの病院が、局所麻酔でカテーテルアブレーションを行う理由の一つに、発作が誘発されないのではないか?という医療者側の不安があります。2020年5月から2023年6月までに発作性上室性頻拍患者さん124人に全身麻酔によるカテーテルアブレーションを行い、発作が少しも誘発できなかった患者さんは1人(0.8%)だけでした。発作性上室性頻拍でも全身麻酔で問題なく行えると考えております。
再発率
2020年5月から2023年6月までに発作性上室性頻拍患者さん124人に全身麻酔によるカテーテルアブレーションを行いました。平均手術時間は68分でした。詳細は、房室結節リエントリー性頻拍80人、WPW症候群(房室回帰性頻拍)28人、心房頻拍15人、誘発されず詳細不明1人です。術後、再発は3例(2.4%)に認められました。詳細は、房室結節リエントリー性頻拍2人(1.6%)、誘発されず詳細不明1人(0.8%)です。房室結節リエントリー性頻拍やhis束近傍起源心房頻拍では、術者としてはとても神経を使うhis束近傍の通電が必要になります。全身麻酔により呼吸が安定することで安全に通電できており、ペースメーカー植込みになった患者さんはいませんでした。発作性上室性頻拍のカテーテルアブレーションでは3泊4日の入院が必要になります。