カテーテル
アブレーション
治療

もっと分かりやすくアブレーションの説明、実際の診療風景をご覧になりたい方には動画・漫画での解説もご用意しています。ぜひご覧ください。

カテーテルアブレーションとは

まず、心房細動は、心臓の左心房という部屋に入ってくる4本の肺静脈という血管から余計な刺激が発生することで起こります。
カテーテルアブレーションは、左心房と肺静脈の間に電気を流しやけどを作ることで、肺静脈から発生する刺激を心房に伝わらなくする治療(肺静脈隔離)です。怖い話に聞こえるかもしれませんが心臓の一部にやけどを作り、心房細動を根治する手術療法なのです。

手術方法1

全身麻酔で行うため、まず薬で眠っていただき気道確保いたします。注意事項としては、グラグラの歯(進行した歯槽膿漏)がある方は、器具挿入時に器具と歯が接触する可能性があるため、歯がとれる、もしくはかけてしまう危険性があるため術前に治療しておいてください。

右大腿静脈(右足付け根)から3本、治療用の管をいれます。右心房から左心房に針を刺して穴をあけ、左心房に治療用のカテーテルを入れます。あけた穴はほとんどが自然に閉じます。

1回の通電で4mm程度のやけどを呼吸や心拍で動いている心臓に隙間なく作っていかなければならないため、とても高度な技術が必要となります。当院では肺静脈以外の好発部位である左心房後壁、上大静脈にもアブレーション治療を行います。

手術方法2

入院期間・術後の安静期間

入院期間は発作性心房細動では3泊4日、持続性心房細動では4泊5日です。術直後はやけどによる炎症のため心房細動がでやすい状態となります。術後1週間は車の運転も避けてください。術後2週間は運動など体に負担のかかることは避けてください。退院翌日よりデスクワークは可能、術後2週間で肉体労働も可能となります。

※患者さんの容態・経過により異なる場合がございます。

カテーテルアブレーションを受けるメリット

約70%の方が無症状という心房細動ですが、その後に起こるかもしれない脳梗塞、心不全、認知症が大きな問題となります。アブレーション手術を受けることにより、この発症率が心房細動のない人と同程度になることが大きなメリットとなります。

また、術後は心臓の負担がへるため、「息切れがなくなった」とか「今までより動けるようになった」という声を多くいただいております。持続性心房細動の方も脳梗塞発症率が抗凝固薬を内服しているより約半分になります。約70%の方は心房細動のため内服していた薬をやめることができます。

メリット01

脳梗塞・心不全・認知症の発症率が心房細動のない人と同程度になります

メリット02

脳梗塞発症率が抗凝固薬を内服しているより約半分になります

メリット03

約70%の方は心房細動のために内服していた薬をやめることが可能です

カテーテルアブレーションの適応

認知症がなければ、年齢制限はしておりません。
他院でアブレーションを断られた、もしくはアブレーションしたが治らなかった方もご相談ください。

発作性心房細動、持続性心房細動
(持続期間1年以内)の方
診断から治療までの期間が短い方が成功率が高いとされております。
参考文献)J Cardiovasc Electophysiol. 2019 Sep;30(9):1483-1490
長期持続性心房細動の方
持続期間5年未満だと治りやすいですが、
それ以上になると治りづらくなります。
持続期間が長い方(5年以上)
一般的には治りづらいというデータもあり、アブレーションを行わない病院もあります。当院では、一定の条件を満たせば治療が可能です。
左心房が大きい方(左房50mm以上)
一般的には治りづらいというデータもあり、アブレーションを行わない病院もあります。当院では、一定の条件を満たせば治療が可能です。

※濵義之. 2018年アブレーション関連秋季大会

難治性心房細動に対するアブレーション

難治性心房細動に対するアブレーション

他院でカテーテルアブレーションを行い、2回目以上のカテーテルアブレーションを当院で行った患者さんは100名以上いらっしゃいます。すべての心房細動を治すことはできないため、治らないと判断した場合、カテーテルアブレーションをお断りすることもあります。
どのような患者さんにカテーテルアブレーションを行っているかは、難治性心房細動に対するカテーテルアブレーション心房細動 アブレーション 2回目心房細動 アブレーション 3回目以上をご覧ください。

当院はクリニックですので紹介状なしで受診していただいても大丈夫です。
以前のカテーテルアブレーション所見は、必要があれば当院から問い合わせいたします。

カテーテルアブレーションの合併症

合併症に関して

心房細動アブレーションの合併症として、心臓の外に血液が漏れ出てしまい血圧が下がる心タンポナーデがあります。これは1%以下の確率で起こるといわれており、万が一の場合は迅速に血液を吸引するなどの処置を行います。左心房は食道と接しているため、食道に関連した合併症があります。食道温を測定する、胃薬を内服することで予防できます。胸やけがする、おなかが張るなどの症状がでることがありますが、万が一症状がでても時間の経過とともに改善します。脳梗塞及び一過性脳虚血発作(TIA)が0.5%以下の確率で起こるといわれております。また、カテーテルを右足の付け根から入れ、そこを止血するために青あざができますが1ヶ月程度で自然に吸収されます。その他、1%以下のまれな合併症があります。

※不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)

カテーテルアブレーションに伴う痛み

痛みを伴う治療のため、当院では全身麻酔で行っております。全身麻酔で行うことで呼吸が安定し、アブレーションの成功率も上がります。術後、安静が必要なため腰痛が起こることがあります。専用の器具を用いて穿刺部を縫合するため、止血されていれば4時間後から歩行できます。4時間の安静時間も点滴の痛み止め、眠くなる薬を使うことで痛みを和らげます。それでも腰痛が出ないとは限りません。翌朝、腰痛があれば希望者には無料で鍼治療を行います。遠慮なく申し出てください。尿道バルーンも希望者にはなしで行うこともできます。尿道バルーン挿入する場合も全身麻酔導入後に挿入しますので、尿道バルーン挿入時の違和感・羞恥心もありません。できる限り痛みを感じずに治療が受けられるような体制にしております。

アブレーションに伴う痛みに関して

カテーテルアブレーションの費用

高額医療の申請を行えば、最終的に10万円程度の自己負担となる方が多いです。収入の多い方で23万円になります。そこに私費がかかります。大部屋希望であれば私費は5000円程度です。

カテーテルアブレーション後の新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)

カテーテルアブレーションを行い、手術で免疫力が落ちて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかるのではないかという不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。それに関する論文がアメリカから発表されましたのでご紹介いたします。

アメリカでコロナが流行している2020年3月から5月までの間にカテーテルアブレーションを受けた124人を調査したところ、術後2週間で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したもしくは感染が疑われた人はいませんでした。

当院においても、2020年5月から2021年4月までに512人にカテーテルアブレーションを行いましたが、術後2週間以内に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した方はいませんでした。当院では術前にPCR検査を受けていただき、陰性の方のみ入院いただいております。

(Workman V et al. Heart Rhythm 2020 Oct;1(4):239-242.)

当院のカテーテルアブレーション治療の特徴

成功率を高めている3つのポイント

当院では、下記の理由から全身麻酔・上大静脈隔離・左心房後壁隔離の全てを取り入れております。

術中の
全身麻酔
心房細動アブレーションの術中に、痛みや不安で呼吸が不安定になると治療精度が落ちてしまいます。当院では全身麻酔で手術を行うことで、患者さんの呼吸が乱れることがありません。患者さんの術中の苦痛を排除するだけでなく、治療精度・成功率を大幅に向上させます。
上大静脈
隔離
心房細動アブレーションの基本は肺静脈隔離です。我々は、肺静脈隔離の他に、心房細動の好発部位である上大静脈、左心房後壁にも治療を行います。そうすることで再発リスクを軽減することができます。
テーラー
メイド治療
肺静脈隔離、上大静脈隔離、左心房後壁隔離で治る患者さんが多いですが、なかにはそこまで行っても治らなさそうな方もいます。そのような方には、心房筋の傷み具合や左心房の大きさ、心房細動持続期間などを加味したテーラーメイドの治療を行っております。できるだけ1回の治療で治すために努力は惜しみません。
全身麻酔の優位性(p<0.001)

全身麻酔の優位性

全身麻酔を行ってアブレーションしたグループと意識下鎮静でアブレーションを行ったグループを比べたところ、アブレーション成功率が全身麻酔グループで高く、手術時間も全身麻酔グループで短かった。
Di Biase L et al. HeartRhythm.2011;8:368-72.

上大静脈隔離の優位性(p=0.035)

上大静脈隔離の優位性

肺静脈隔離に必要に応じて上大静脈隔離をするグループと肺静脈隔離に全例で上大静脈隔離を追加するグループを比べたところ、全例で上大静脈隔離を追加したグループがアブレーション成功率が高かった。
Ejima K et al. AmJCardiol.2015;116:1711-6.

左心房後壁隔離の優位性(p=0.02)

左心房後壁隔離の優位性

肺静脈隔離に左心房後壁隔離を追加したグループと肺静脈隔離のみを行ったグループを比べた結果、左心房後壁隔離を行ったグループで成功率が高かった。
Kim JS et al. IntJCardiol.2015;181:277-83.

バルーンテクノロジー(クライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーンなど)に対する私見

クライオバルーン、ホットバルーン、レーザーバルーンといったバルーンテクノロジーが使えるようになり、「幕張不整脈クリニックでは使用しないのか。」という質問を多くいただきます。
バルーンテクノロジーのメリットは、難易度の高い高周波アブレーションによる肺静脈隔離をだれが行っても中等度の成績(発作性心房細動で80%程度)を残すことができることです。手技時間もなれてくれば1時間程度で済みます。一日に治療できる件数が増えるため、初回治療はバルーンで行い、再発したら高周波アブレーションで行う病院が増えてきております。
デメリットとして、肺静脈隔離しかできないため上大静脈隔離や左心房後壁隔離など、追加治療を行えないことがあげられます。肺静脈隔離以外の治療が必要な方を、術前に正確に予測することができないため、どうしても成功率が下がってしまいます。私たちは、痛みをわからなくして、できるだけ一回のアブレーションで治したいため、バルーンテクノロジーは使用しない方針です。

再発を見逃さない、
独自のケア

心房細動は再発しても自覚症状がないことが多いのが怖いところです。
当院では、再発を見逃さないために徹底したモニタリングで再発の有無を厳しくチェックします。
また、ご自宅での患者さんの体の変化にも迅速に対応いたします。

1週間の心電図検査

アブレーション手術後の確認検査として、一般的には24時間のホルター心電図検査が行われています。しかし、24時間以内に再発がみつからないことが多いこともあります。当院では1週間の心電図検査を定期的に行うことで、症状のない心房細動もでなくなったか見落としをしないように徹底的に調べています。1週間と検査期間は長いですが、お風呂にも入れますし運動もできますので日常生活を送ることができます。皮膚かぶれが起こらないように皮膚にやさしい電極を用いるなど、かぶれ対策もしております。

1週間の心電図検査イメージ

心電図ホームモニタリング

心電図のホームモニタリングとは、小型の装置と携帯のアプリケーションで、心電図を自宅測定しクリニックへご報告いただける無料のサービスです。測定結果を当院で判読し、患者さんの状況を確認、適切な対処法をお伝えすることで、アブレーション後の動悸に対する不安を減らすことに繋がります。また、抗凝固薬を止めやすくなり、金銭的な負担・出血のリスクを軽減させることにも繋がります。術後の生活は不安なものですが、このシステムを利用することで不安の軽減に繋がればと考えております。

心電図ホームモニタリング

心電図ホームモニタリングイメージ

AppleWatchによる心電図ホームモニタリング

心電図をAppleWatchで自宅測定しクリニックへご報告いただける無料のサービスです。
測定結果を当院で判読し、患者さんの状況を確認、適切な対処法をメールもしくは電話でお伝えすることで、アブレーション後の動悸に対する不安を減らすことに繋がります。

カテーテルアブレーションの流れ

大きく、術前検査、手術、術後観察の流れに分かれます。それぞれ詳しく説明していきます。

術前検査

左心房の左心耳という場所に血栓ができる可能性のある不整脈ですので、血栓がないことを造影CTや経食道心エコー検査(胃カメラみたいな検査)で確認します。経食道心エコー検査は脳梗塞の危険性が高い患者さん、腎臓が悪く造影剤が投与できない患者さんに行います。心エコー検査で心臓の大きさや動きも確認します。全身麻酔で行うため呼吸機能検査なども行います。心房細動患者さんの約70%が睡眠時無呼吸症候群といわれてます。睡眠時無呼吸症候群を放っておくとアブレーション後の再発が多いため、術前に睡眠時無呼吸症候群簡易検査を行います。

エコー写真
睡眠時無呼吸症候群簡易検査

初診~手術~術後1年までの流れ

※患者さんの容態・経過により異なる場合がございます。

1

外来
採血・造影CT・心エコー・ホルター心電図 + 睡眠時無呼吸症候群簡易検査

2

1日目

13:30入院

  • 院内のご案内
  • 入院に関するご案内
  • アブレーション(手術)に関するご案内

3

2日目 9:00開始の場合

09:00手術開始

  • 全身麻酔導入→心房中隔穿刺→肺静脈隔離、左心房後壁隔離、上大静脈隔離
  • ※患者さん毎に必要であれば追加治療

10:30止血・麻酔から目覚めます

11:00術後4時間安静

  • 薬で眠っていただきます

15:30ベッド上で動けます

4

3日目

抜糸・止血確認後、歩行可能です

午前

  • 検脈指導
  • 持続性心房細動で希望者に心房細動に効果のある鍼治療
  • 腰痛のある方へは鍼治療
  • 心房細動に効果のあるツボ指圧指導
  • 心電図ホームモニタリング設定・送信指導

午後

  • 検脈指導
  • 心房細動に効果のあるツボ指圧指導
  • 心電図ホームモニタリング送信指導

21時頃

  • 必要な方 睡眠時無呼吸症候群精密検査

5

4日目

【発作性心房細動で入院の方】この日に退院【持続性心房細動で入院の方】

午前

  • 検脈指導
  • 心房細動に効果のあるツボ指圧指導
  • 心電図ホームモニタリング送信指導

午後

  • 検脈指導
  • 心房細動に効果のあるツボ指圧指導
  • 心電図ホームモニタリング送信指導

6

5日目

10:30【持続性心房細動で入院の方】退院

2ヶ月間は一過性の心房細動がでやすくなりますが、アブレーション治療によるやけどの炎症のせいなので経過とともに改善していきます。必要に応じて抗不整脈薬(心房細動を起こりづらくする薬)の内服

7

1ヶ月後

再診/睡眠時無呼吸症候群の方は治療(CPAP)開始

8

3ヶ月後

1週間の心電図検査・心エコー検査

9

6ヶ月後

1週間の心電図検査
再発がなく、脳梗塞の危険性が少ない方は抗凝固薬中止

10

1年後

24時間ホルター心電図・もしくは1週間の心電図検査・心エコー検査

心房細動カテーテルアブレーションの手術時間

約60分

発作性心房細動、持続性心房細動で肺静脈隔離、左心房後壁隔離、上大静脈隔離を行った場合、約60分です。左心房が拡大している方、追加治療が必要な方は約90分になります。全身麻酔なので、寝て起きたら手術は終わっております。

入院期間および術後の安静

入院期間は発作性心房細動では3泊4日、持続性心房細動では4泊5日です。術直後はやけどによる炎症のため心房細動がでやすい状態となります。術後1週間は車の運転も避けてください。術後2週間は運動など体に負担のかかることは避けてください。退院翌日よりデスクワークは可能、術後2週間で肉体労働も可能となります。

※患者さんの容態・経過により異なる場合がございます。

術後の確認

術後2ヶ月はやけどによる炎症で心房細動がでやすい状態ですが、その多くは時間の経過とともにでなくなります。心房細動がでやすいこの期間は抗不整脈薬(心房細動を抑える薬)を内服します。術後2ヶ月の時点で心房細動だった場合、薬で眠っていただき電気ショックをかけ洞調律(規則正しい脈)に戻します。術後3ヶ月を過ぎても心房細動がでる場合に再発と考え、2回目の治療を検討します。しかし、もともと無症状の方もいるため再発を見落としてしまうことがあります。1日だけホルター心電図をつけて調べている病院もありますが、幕張不整脈クリニックでは1週間の心電図検査を定期的に行い、症状のない心房細動までもでなくなったか見落としをしないように徹底的に調べています。

1週間と検査期間は長いですが、外来で行え、お風呂にも入れますし運動もできますので日常生活を送ることができます。長時間心電図の機器は郵送でも返却可能です。検査期間以外に動悸が起こることもあります。幕張不整脈クリニックではある画期的な取り組みを行っております。それは「心電図ホームモニタリング」です。これは、小型の装置と携帯のアプリケーションで、心電図を自宅測定、クリニックへ報告いただける無料のサービスです。測定結果を当院で判読し適切な対処法をお伝えすることで、アブレーション後の患者さんの動悸に対する不安の軽減に役立ちます。少しでも患者さんの不安・負担の軽減に繋がっていただければと思っております。入院中に設定方法、操作方法等をご説明いたします。

ページ著者・監修者 院長 濵 義之

濵 義之

主な経歴

2003年山梨医科大学卒業。循環器科の中でも不整脈を専門とし、心房細動に対するアブレーション手術を得意とする。君津中央病院循環器内科の医長・部長などを経て2020年に幕張不整脈クリニック(千葉市花見川区)を開院。5000件程度のアブレーションに携わり、年間500件以上のアブレーション手術を行う。

資格

  • 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
  • 日本循環器学会 循環器専門医
  • 日本内科学会 認定内科医