心房細動アブレーションとは、心房細動という不整脈を治療する手術であり、平均的な持続性心房細動アブレーションの成功率は約60%といわれております。これまで私が携わったアブレーションは5000件以上にのぼります。術前から術後まで一人一人の患者さんと丁寧に向き合い、治療精度をあげながら、負担の軽減にも努めてきました。一人でも多くの患者さんを救うために、私が大切にしてきたこと、そして貫いている信念について3つお話しをしたいと思います。一つ目の話は「圧倒的な成果は情熱なくして生まれない」という事です。
Episode1
圧倒的な成果は情熱なくして生まれない
一つ目の話は、「圧倒的な成果は情熱なくして生まれない」という事です。2011年、私は君津中央病院に赴任します。当時、持続性心房細動アブレーション治療の成功率は、どの病院で行っても低く、身体的、心的ストレスも相当なものでした。患者さんは不安を抱え、術後も再発におびえているような状態だったのです。「困っている患者さんに寄り添い、一人でも多く、負担やリスクなく救いたい」
私は、成功率向上、患者さんの負担と悩みの軽減を目指し、様々な論文を読み漁り、アブレーション方法の改善に取り組みました。結果、持続性心房細動アブレーション成功率も上がり、患者さんの負担も大幅に減らすことができました。
そして関東圏だけでなく、全国の患者さん、病院関係者から厚い信頼をいただき、私の携わるアブレーション年間件数は赴任当初の約16倍、500例以上まで大きく伸びたのです。
再発率の、より正確な評価
理想の不整脈診療のためには、今行っていることを常に振り返り、改善し続ける姿勢が何より大切です。
最初に行ったことは、再発率を厳しく評価することでした。
術後の経過確認に着目し、通常行われている24時間のホルター心電図ではなく、1週間の心電図検査を実施。その結果、予想以上に再発が多いことがわかりました。
好発部位を追加治療することで成功率向上
次に私はどのように治療すれば、再発率を減らせるか模索し始めました。
治療する部位に関しても様々な検討を行いました。通常は、1回目の治療として肺静脈隔離のみを行い、再発した場合、追加治療を行う施設が多いです。我々は、肺静脈隔離の他に、心房細動の好発部位である上大静脈、左心房後壁にも治療を行い、そこまで行っても治らないと判断した場合、さらに追加治療を行うようにいたしました。そうすることで1回の治療で高い成功率を達成することができました。
全身麻酔により苦痛軽減・成功率向上
麻酔方法も試行錯誤する中で、私が最終的に行き着いた先が、「全身麻酔」です。心房細動アブレーションとは呼吸で動く心臓に1回4mm程度のやけどを正確につくっていく治療です。痛みや不安で呼吸が不安定になると、治療精度が落ちてしまいます。全身麻酔とは自発呼吸のない状態で、呼吸の深さはこちらでコントロールできるため、呼吸が乱れることはありません。
全身麻酔で手術を行うことで、患者さんの術中の苦痛を排除するだけでなく、治療精度、成功率を大幅に向上することができました。
術後の疼痛軽減
術後の疼痛軽減にも積極的に取り組んでおります。術後の外来で、アブレーションに関するアンケート調査を行ったところ、穿刺部(カテーテルを通す為、足の付け根の血管に管を入れた部位)の再出血、術後の安静時に起こる腰痛、尿道バルーンの違和感でお困りの方が多いことが分かりました。ある論文で穿刺部を縫うことで安静時間を短くできるということを知り、導入したところ安静時間がこれまで約20時間だったのが、4時間まで短縮できました。しかし、その後のアンケート調査で4時間の安静でもつらいという意見がありました。そこで、術直後より鎮痛薬を定期的に点滴投与し、さらに鎮静薬も4時間点滴投与することで、術後の安静時間も眠っていただくことにいたしました。手術開始で全身麻酔導入し、起きたらベッド上で動ける状態になったことで腰痛の訴えもほとんどなくなりました。2022年からは、専用の器具を用いて静脈を縫うことで、穿刺部の血腫が大幅に少なくなり、表面を縫うのに比べ、体内の静脈を縫うことで傷が格段にきれいになり、止血されていれば4時間後から歩行できるようになりました。しかし、1日ベッドの上で過ごさなくてはならないため腰痛が出ないとは限りません。術後腰痛に対する鍼治療を行っております。翌朝、腰痛があれば希望者には無料で鍼治療を行います。
尿道バルーンの違和感も全身麻酔導入後に挿入することで挿入時の羞恥心、痛みをなくし、更に麻酔方法を変更することで、術直後に尿道バルーンを抜くことができるようになり、術後の尿道バルーンの違和感もなくすことができました。希望者には尿道バルーンなしで行うこともできます。
「理想の不整脈診療」のためには、今やっていることを常に振り返り、必要であれば改善を図り続けることが大切だと思っております。「圧倒的な成果は、情熱なくして生まれない」のです。
Episode2
「努力」への意識
なぜ、私が常に努力をし続けているのか?私の生い立ちを少し話したいと思います。私が「努力」というものを初めて意識したのは、小学校高学年の時でした。ある日、私はとあるテレビにくぎ付けになります。それは大企業の社長のドキュメンタリー。入社当初から会社のあるべき姿を誰よりも深く考えたというその方は、20人抜きで社長へと上り詰めたのだそうです。「何よりすごいことは常に仕事のことを考え、努力し続けたことだ」偉業を成し遂げる人の在り方、努力の大切さに衝撃を受けた私は、大きくなったらこんな風に仕事がしたい、と思い描くようになりました。もしかしたら自分の人生も「努力」で大きく変わるかもしれない。そんなことを考え始めた小学校時代でした。
医師という道への努力
医師を志し始めたのも、小学校高学年の頃です。家族の知り合いだった医師の方が「人を助けることのできる、やりがいのある仕事」とおっしゃっていたのが印象的で、医師になりたいと思うようになりました。中学、高校は目標に向かって勉強に励み、無事医学部に合格。大学4年の時、私は初めて手術に入ります。それは、自分の父親の冠動脈バイパス手術。執刀医が何をしているのかまったくわからない・・・それが最初の感想でした。
「自分も父親を診れるようになりたい」そんな想いから私は、循環器内科に興味を持つようになります。
努力をやめてはいけない
研修医時代には、尊敬する人たちとの出会いがあり、多くを学びました。
知識を深める事の大切さ、貪欲に学ぶ姿勢、他の人のデータに頼らず自分で確かめることの重要性、でてきた結果が思うようなものでなくてもそのデータに真摯に向き合うことで新しい知見を見出すことに繋がること。結果的にその方々はそれぞれが目指していた立場になられました。彼らに共通していたのは、どんなに成果が出ても、決して努力を止めない姿勢です。人の命に携わる身として、決して「努力をやめてはいけない」これは私の強い信念です。
Episode3
不整脈の悩み、不安。その100%排除を目指して
最後の話は「幕張不整脈クリニック」についてのことです。持続性心房細動アブレーション治療成功率を上げることができたのは、なにより患者さんを思うぶれない気持ち、そして努力と圧倒的な情熱の賜であると自負しております。しかしながらその成果に甘んじる事なく「不整脈の悩み、不安。その100%排除を目指して」をモットーに私たちは「幕張不整脈クリニック」を開院しました。そして、様々な分野、視点で理想の医療を追求しています。
例えば、退院後の日常生活の不安を少しでも取り除き、快適な日常生活をお送りいただけるよう、入院中に心房細動に効果のあるツボ指圧指導、希望者には心房細動に効果のある鍼治療、検脈指導など行うこともその一つです。
不整脈の悩みと不安を解消するために、あらゆる手段、試行錯誤、努力を続ける。私たちの追求心の表れなのです。
専門チームであることの強み
総合病院では手術スタッフは手術のみ、病棟スタッフは病棟のみの業務を行うところがほとんどです。当院では、多くのスタッフが、外来、手術、病棟すべての業務を行っております。担当看護師が術中を含め出棟から退室後の術後管理までを一貫して受け持つことで、患者さんが一番不安に感じる時間をできるだけ長く共有し寄り添っていくことで、信頼関係が築きやすく、手術に対する不安軽減につながると考えております。実際に患者さんからも「安心して手術を受けることができました!」という感謝の声が数多く寄せられています。
睡眠時無呼吸症候群精密検査の同一入院での実施
心房細動アブレーション再発の強い因子として睡眠時無呼吸症候群があり、心房細動患者さんの約60%の方が、睡眠時無呼吸症候群といわれております。カテーテルアブレーションだけでは心房細動が治らず、睡眠時無呼吸症候群の治療もあわせて行うことで心房細動が治る患者さんも多くいらっしゃいます。しかし、呼吸器内科医もしくは耳鼻咽喉科医が検査、治療を行うことが多く、循環器内科医が精密検査、治療まで行っている病院はほとんどありません。また、睡眠時無呼吸症候群精密検査は実施できる病院が少ないです。私たちは、できるだけ1回の入院ですべて済ませることができるように、心房細動アブレーション入院時に必要があれば、睡眠時無呼吸症候群精密検査も行える体制を整えております。
術前CTを放射線科医に読影依頼し所見を提供
心房細動の患者さんは高齢の方が多く、心房細動以外の病気をお持ちの方が多いです。手術前に心臓のCTをとりますのでその際、肺やお腹も一緒に撮影し、当院からのサービスとして放射線科医に読影依頼を出し、癌など他の病気が隠れていないかチェックしております。約1%の確率でがんがみつかります。心房細動を治すだけでなく、患者さんの健康を第一に考えております。
術後の確認は、1週間の心電図検査
1日のホルター心電図に比べ1週間の心電図検査を行うことで、モニタリング期間は7倍、不整脈を捉えられる確率は3倍になります。携帯型心電計では捉えられない、無症候性心房細動の再発も捉えることができます。しかし、1日のホルター心電図に比べ、1週間の心電図検査を行うには非常にコストがかかります。診療報酬は、1日のホルター心電図でも1週間の心電図検査でも一緒ですが、機器を多く用意しなければならないためです。郵送返却に対応するために、さらに多くの機器が必要になります。術者としては、再発はみたくないものです。なぜ、そこまでして再発をみつけようとするのか?それは、最善の医療を提供するためには、正確な診断が必要不可欠だと考えているからです。
ホルター心電図、1週間心電図検査は郵送返却可能
当院は、遠方から来院される患者さんが多いためホルター心電図、1週間心電図検査は着払いでの返却ができるようにしております。返却のためだけにご来院していただく必要はないようにしております。
心電図ホームモニタリングの実施
幕張不整脈クリニックではある画期的な取り組みをスタートさせました。それは「心電図ホームモニタリング」です。術後の生活は、患者さんにとって不安なものですが、それはクリニック側も同じです。通院いただかなくても、術後の患者さんの心電図検査を自宅で行うことができれば、患者さんとクリニック側の不安を解消することができます。この画期的なシステムは小型の装置と携帯のアプリケーションで、心電図を自宅測定、クリニックへ報告いただける無料のサービスです。測定結果を当院で判読し、患者さんの状況が確認でき、さらには適切な対処法をお伝えすることで、例えば抗凝固薬をやめやすくなり、金銭的な負担・出血のリスクを軽減、アブレーション後の動悸に対する不安を大幅に減らせます。少しでも患者さんの不安・負担の軽減に繋がっていただければと思っております。
入院患者様満足度評価9.8
様々な取り組みの結果、入院患者様満足度が1000人以上の患者様にご協力いただき、10点満点の評価で平均9.8点となりました。患者様のご要望にできるだけお応えし、少しでも入院生活を快適にお過ごしいただけるようスタッフ全員で取り組んでおります。その結果、カテーテルアブレーションに対する悩み、不安を少しでも和らげられればと考えております。
圧倒的な研究量、行動量、熱意で、努力をやめない医療へ
様々な改善を行ってきましたが、それでもまだ、不整脈治療には未開拓な部分があります。
高い成功率に満足するだけでなく、いかに患者さんの負担が少なく、極力一回だけでアブレーションを終えられるか、これは私たちの永遠の課題でしょう。
「幕張不整脈クリニック」は、不整脈で悩む患者さんに、誠心誠意向き合う医療機関として、患者さん・地域・社会に貢献することをお約束します。受診しやすいようJR幕張駅徒歩3分とアクセスのよい場所に開設いたしました。
圧倒的な研究量、行動量、熱意で、努力をやめない医療へ。不整脈の悩み、不安。その100%排除を目指し、スタッフ一丸となって、最善の医療をご提供できるよう努力してまいります。
ページ著者・監修者 院長 濵 義之
主な経歴
2003年山梨医科大学卒業。循環器科の中でも不整脈を専門とし、心房細動に対するアブレーション手術を得意とする。君津中央病院循環器内科の医長・部長などを経て2020年に幕張不整脈クリニック(千葉市花見川区)を開院。5000件程度のアブレーションに携わり、年間500件以上のアブレーション手術を行う。
資格
- 日本不整脈心電学会 不整脈専門医
- 日本循環器学会 循環器専門医
- 日本内科学会 認定内科医