健康診断で心房細動を指摘されておりましたが、5年程度放置していた53歳男性です。高血圧もあり、左室肥大を認め、左房径58mmと高度拡大しておりました。
左房径50mm以上になるとカテーテルアブレーションの成績がだいぶ落ちるため治療しない施設も多いです。12誘導心電図でf波もしっかりみえる長期持続性心房細動で50代と若いため治る見込みはあると判断し、カテーテルアブレーションを行う方針といたしました。
残念ながら心房頻拍で再発してしまいました。左心房は高度拡大しておりましたが、左心房の傷みはあまりなかったため2回目の治療で治ると判断し、2回目カテーテルアブレーションを行いました。
左下肺静脈僧帽弁輪間線状焼灼を再度行いましたが、カテーテルアブレーションで完成させることはできませんでした。左下肺静脈僧帽弁輪間線状焼灼は、完成させることが困難な患者さんがある一定数います。そのようなときに、マーシャル静脈へのエタノール注入という特殊な手技があります。心臓の外側にある細い静脈に高濃度エタノールを注入することで、アルコールで心筋にダメージを与えるという方法です。限られた施設でしかできない特殊な方法ですが、私は、100症例以上の経験があります。この患者さんは、エタノール注入により左下肺静脈僧帽弁輪間線状焼灼が完成しました。誘発しても心房頻拍は誘発されず、誘発された心房細動もすぐに自然停止し、イソプロテレノール負荷(不整脈を誘発する薬)を行っても心房細動を起こすような上室性期外収縮はでなかったため手術を終了しております。
術後、1年以上たちますが再発なく経過しており、抗不整脈薬、抗凝固薬も中止しております。
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